さて、今回は琴古流尺八と都山流尺八の具体的な違いについてお話ししたいと思います。
流派が違うといえども同じ「尺八」。そんなに違いはないかと思われるかもしれませんが、比べて見ると思いの外色々と違いがあります。
まずはこちらをご覧ください。
![歌口の違い(琴古流尺八と都山流尺八)](https://static.wixstatic.com/media/0fc570_9a97fcd70c204b0d8cf914bbe0601199~mv2.jpeg/v1/fill/w_147,h_110,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,blur_2,enc_auto/0fc570_9a97fcd70c204b0d8cf914bbe0601199~mv2.jpeg)
(左:琴古流 右:都山流)
ここは歌口といい、尺八の息を当てる部分に水牛の角や象牙、鹿の角などがはめ込まれています。よく見るとこの部分の形状が異なりますね。これが、楽器をひと目見ただけで琴古流と都山流を見分けることができる、大きな違いの一つとなっています。
続きましてはこちらをご覧ください。
![](https://static.wixstatic.com/media/0fc570_b2082ec21a814654b266d2b6ff2d46d3~mv2.jpg/v1/fill/w_147,h_127,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,blur_2,enc_auto/0fc570_b2082ec21a814654b266d2b6ff2d46d3~mv2.jpg)
(左:琴古流尺八譜 右:都山流尺八譜)
初めてご覧になる方には全く何のことかわかりませんね。同じ「黒髪」という曲の楽譜なのですが、ひと目見ただけでは、左と右とでは同じ曲と思えないほど異なって見えます。琴古流の楽譜は「お経ですか?」とか、都山流の楽譜は韓国語の勉強をしていた人に「これは読めそうです!」と言われたことがあります。
もちろん、お経でもハングルでもなく、きちんとした楽譜なのですが、五線譜に慣れ親しんで来た方々にとっては、ひと目見ただけでは難解に感じるかもしれません。
詳細な読み方は、また別の機会に説明させて頂きたいと思いますが、基本的なことを少しだけ説明します。
尺八の楽譜に使われている文字、これは共通していて「カタカナ」です。琴古流は「ロ・ツ・レ・チ・リ」、都山流は「ロ・ツ・レ・チ・ハ」を基本としてそれぞれの音を表しています。一尺八寸菅の場合、西洋音階で表すと「レ・ファ・ソ・ラ・ド」となります。また、五線譜は左から右に横に読みますが、尺八譜の場合は縦読みになります。慣れてしまうと大丈夫なのですが、最初は切り替えるのが大変かもしれません。
![琴古流尺八本曲楽譜 乾 表紙](https://static.wixstatic.com/media/0fc570_ec5b664db3374e85926e644423816789~mv2.jpg/v1/fill/w_115,h_363,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,blur_2,enc_auto/0fc570_ec5b664db3374e85926e644423816789~mv2.jpg)
![都山流本曲「慷月調」](https://static.wixstatic.com/media/0fc570_868250e11c454030848e66af5d31a2e9~mv2.jpg/v1/fill/w_159,h_228,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,blur_2,enc_auto/0fc570_868250e11c454030848e66af5d31a2e9~mv2.jpg)
また、古くから伝わる尺八の独奏曲である「本曲」にも違いがあります。琴古流の場合、流祖である黒澤琴古が虚無僧寺を訪ねて曲を集め、その後に整理された計36曲を「琴古流本曲」として伝承しています。
また都山流は流祖・中尾都山が創作した尺八独奏曲や尺八多重奏曲を「都山流本曲」として伝承しています。流派によって「本曲」の演奏形式や技法などは全く異なります。
今回は琴古流と都山流の流派の違いについてお話ししました。次回はそれぞれの流派の楽譜の読み方を少し詳しく解説しようと思います。